悲しみの果てに、死者の群れをお願いします。

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friends after 3.11【劇場版】

岩井俊二監督の『friends after 3.11【劇場版】』を観てきました。タイトルの通り、2011年3月11日に発生した東日本大震災と、その影響で起きた東京電力所管の福島第一原子力発電所の事故に関しての、地元に住んでおられる人々、原子力関係者、被災地(という表現がいいのかはわかりませんが)で運動等を展開されている方々のインタビューを中心として構成されたドキュメンタリー映画です。

映画としては、監督である岩井俊二氏が出ずっぱりで、インタビューや現地に赴いたりし、東日本大震災による、場所と人々に残された傷跡を、生々しくもある程度の距離を意識して保ちつつ、観客に提示してくれています。

監督の岩井俊二氏が意識していたのかどうかはわかりませんが、僕は、モキュメンタリー的な作り方というかエッセンスを、この映画は敢えて取り入れたのではないかなと、観ている間、ずっと思っていました。恥ずかしながら、スクリーンに映し出される風景を、僕が住んでいる同じ日本だとは思えなかったのです。まるで、東日本大震災という架空の出来事を扱った映画の中の出来事のように思えてしまって、妙に現実感を抱くことが出来なかったのです。

それは、僕が大阪に住んでいるという物理的な距離と、目に見える影響等があまりない、簡単に言えば、東日本大震災以前との生活となんら変わらないことで生じてしまう温度差が、東日本大震災の影響を受けた方々とかなりあるということです。阪神・淡路大震災の影響があった地域に住んでいるのに、阪神・淡路大震災を間接的ではありますが経験したのに、です。

恐らく、監督の岩井俊二氏もそのことを意識して、敢えてそういう視点、手触りみたいなものを映画の中に放り込んだのではないかな、と思いました。

また、これも意図的だとは思うのですが、福島第一原子力発電所の事故による影響や、今後、原子力発電所だけではなく、原子力というものに対してどう対応していくのかということを映画としての主題に置きつつも、東日本大震災での地震や津波による都市の崩壊についてを、原子力の問題とテーマを分ける形での提示としない(境界を曖昧にさせる)ことで、当事者以外には架空の出来事ではないかという誤認識を、わざとさせようとしたのではないでしょうか。

もし、これが現実に起きたことだとしたら、あなたはどうしますか?と問われているように思えたのです。勿論、現実に起きたことなのですが、あまりにも、日本の中でも考え方や捉え方の温度差が激し過ぎることによって、結果的に時間と共に風化していくことに警鐘を鳴らしたかったのではないでしょうか。

僕個人としては、原子力発電所というか、原子力は、世界の問題として、全て廃止にする必要があると思っています。理由として、原子力は人間にも地球にも扱うには危険過ぎるものだからです。処理出来ない廃棄物がどんどんと溜まっていくというのは、今の人達にとっては、遠い未来に解決すればいいと思っているのかもしれませんが、過去に生きた人間(=我々)としてはかなり無責任な所為だからです。

今までの歴史、培ってきた技術、そういったものを捨てるのは勇気がいることだとは思います。でも、今こそその勇気を使わないと、永遠に勇気を失うことになってしまうのではないでしょうか。それは、世界に対して日本が、日本人が率先してやるべきことだったのではないかと思うと、残念でなりません。これからでは遅いです。しかし、今からでも遅くてもやるべきことなのではないでしょうか。

映画ではナビゲーターとして松田美由紀さんがクレジットされており、松田美由紀さんがこの映画を作る切っ掛けとなったらしいのですが、はっきり言って、監督の岩井俊二氏がずっと出ずっぱりなので、出演してもらう意味はなかったように思います。あ、それもわざとか。それで、焦点をぼけさせて、よりモキュメンタリーっぽくしようとしたんかな。

いつになく真面目に感想を書いていますが、一番気になったのは、監督の岩井俊二氏の若干ロンゲの髪の毛がかなり痛んでいるんじゃないかな、ということだったのは内緒です。藤波心さんと一緒に歩いている場面で、特にそう感じました。

最後に、個人的なことなので、この映画の感想に書くことではなく、別エントリーで書くことでしょうけれども、この映画(だけではないですが)が切っ掛けになったことがあるので書きます。

体調を崩してしまって長期で会社を休む形になってしまったのですが、それで自分の時間が増えたことで、色々と考えたり、映画館で映画を再び多く観るようにもなり刺激を受けたのでしょう、自分にとって出来ること、やりたいことって何だろう、それを見付けて、今後はやっていきたいなと考えるようになりました。

まだまだ具体的には見えませんが、ぼんやりとではあるのですが、歩く方向だけはわかったような気がしています。原子力に対してとか、具体的な何かについての運動をするということではないのですが、自分がやりたいことでしか自分が出来ることはないのかなということを、この映画を観て強く感じました。難しいかもしれませんし、頓挫するかもしれません。それでもやりたいと。この映画がなんとなくではありますが、その方向性を見付ける切っ掛けを作ってくれたことには感謝しています。

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