悲しみの果てに、死者の群れをお願いします。

演歌・オブ・ザ・デッド 公式サイト(2005-2024©りょんりょん) ※(主に)映画感想dis blogです。かなりdisってるので、不快になられた方にはお詫び致します。ごめんなさい。

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ザ・レッジ -12時の死刑台-

ネタバレしながら、disってますが、映画の出来は普通だと思います。




これも予告編に騙されたというか。予告編はミステリースリラーっぽいような印象を与えますが、実際には、なんでこうなったのかっていうのが延々と語られるだけです。それでも、最後のオチ以外は意外と楽しめて、どう決着させるんだろうっていう興味の引っ張り方はうまかったのですが、肝心のオチがね……。

話の内容は、ミステリーでもスリラーでもなく、宗教とは何だろうねっていう問いかけです。と言っても、小難しい思想とかをメインにするのではなく、独身男と人妻とのいけない関係をメインとして、そこに宗教(的な思考かな)を絡ませるという形です。

思い返すと不思議な映画でした。浮気がメインと言ってもドロドロした雰囲気でもなく、かといって、オサレに描いているわけでもないですし。生活を淡々と描いている、でもないし。テンポは意識しなかったのですが、それが実は心地良かったのかもしれません。

主人公が無宗教(過去の経緯もあって)で、狂信的なプロテスタント信者の元薬中の旦那、信仰を強制されているこれまた元薬中の配偶者、主人公の同居人のゲイ、カトリック信者の刑事、これらのメインキャラをうまく使って、宗教観による争い、思考の違い、それによる悲劇的な結末と、希望のある結末を見せていくという意図はわかるのですが、観ている僕としては、ミステリースリラーだと思い込んでいたので、最後に何かがあるっていう意識が常にあったのがあかんかったんかなー。

無宗教の主人公が自分の信念に準じて、愛する人の為に飛び降りて死ぬ。狂信的なプロテスタント信者は、自分の犯した罪を意識しつつ、これも神様の試練だとまだ思っている。信仰を強制されている配偶者は、主人公の死によってやっと自分の足で歩くことを決意したけど、もう遅い。カトリック信者の刑事は、配偶者の裏切りを、自分への愛故のことだと受け入れて、Life Goes On。てな結末を登場人物はそれぞれ迎えるわけです。

宗教観を描いた映画としては、それぞれの結末は順当ではあるんですが、僕はそういう視点で観ていなかったので、何らかの刺激的なオチを求めてしまうんですよねー。そういう意味では、この映画も僕も不幸な出会い方をしたのかなぁ。まぁ、あの予告編じゃなかったら観なかったとは思うので、善し悪しではあるんですけどね。

本当に最後までのめり込んで観てましたし、こういうテーマとしては珍しく人物中心で物語だけを描くシンプルなもので、観易いように作られてはいたと思うんですよね。その分、テーマが少し軽い表現になってしまっていたとは思いますが、あんまし重過ぎるのもねぇ。そういう塩梅もうまく調整した結果なのかもしれません。

この映画の最大のインパクトである、ラストの主人公のビルからの飛び降りですが、ここに物語を収束させていく方法をもう少し劇的に盛り上げていれば、ミステリースリラーだと思って観た観客も満足させるだけのオチになったんじゃないかなぁ。少し淡白に飛び降りさせてしまったように思えます。しかも、その場面の合成が昔の映画みたいにズレているという技術的な粗もありましたし。

えっと、毎度のことながらdisっていますが、映画としては悪くはないと思います。日本人は基本無宗教な人が多いだろうから、この映画は日本人にはピンと来ない題材だと判断して、ああいう予告編にしたんかなぁ。