※ネタバレしていますが、あんましdisってません。
頑張るおっさんを堪能する映画です。おっさん好きなら観て損はないかもですよ。僕はおっさん好きではないですけどね。
結構ね、淡々と進むわりにはグイグイと引き込まれるんですよね、映画の中に。全体の骨子自体はシンプルだし、これを仰々しく展開させても逆に粗が出そうなので、僕はこの方法で正解だったんじゃないかなぁと思いました。
最初に主人公の銀行強盗のおっさんの家族構成や心情、性格を描き、ラスボスとの接点も張りつつ、伏線も用意するということをやっていて、丁寧な印象を与えるんですが、思い返してみるとかなり強引なんですよね(笑)。でも、そこが主人公の銀行強盗のおっさんのタフネスさを現すことに何故か繋がっているし、おっさんのこの後の行動に説得力というか、推進力を与えているんです。
映画の中の警察って、ほとんどアホの集団ですよね(おいおい)。この映画もそうなんですよね。ちょっと考えればわかることじゃんか、おっさんとラスボスの繋がりって。それをボヤかす為におっさんを軸に、副主人公ポジションで切れ者という設定の女性刑事、なんとなく正体不明な元郡兵(この郡兵の存在がよくわかんないよ、フランスさん)、ラスボスとその妻、配偶者と娘というキャラを場面毎に入れ替えたりしながら回して、状況や経緯を観客に知らせるというテクニックはいいなぁと思いました。
恐らくですが、ミステリー要素は敢えて切り捨てて、おっさんは一体どうなるんやっていう部分に焦点を合わせることに注力したんでしょうねー。おっさんを魅力的に撮るということに専念したというか。
このおっさんがまたね、結構タフネスなんですよ。ここだけファンタジーっぽい印象を与えるんですが、これがラストにちょっと効いてくるんですよね。タフネスと言っても、一般人よりちょっと上程度なので、映画の中でのリアリティは損なわれていないですし。大物の銀行強盗っていう設定みたいなので、これくらいは出来て当たり前でしょっていう範疇はかろうじて守ってるっていう印象かな。
おっさんがまたね、悪人のわりには人を簡単に信用しはるんですわ。俺は人を信用せん、とか言いつつ。結局、最後は刑事を信用しようとしたところで、このおっさんを娘を殺した犯人だと勘違いした父親の狙撃によって川落ちして死んだんかな?っていう形で幕を閉じるのかと思ったら、養護施設に入れられた娘のところに、娘がおっさんの為に書いて渡した絵がモロッコから郵送されてきて、生きてたんかいっていうオチは、ちょっとリリカルなスパイスで、ここもよかったところです。人によっては、締め方が甘いとか、予定調和やんけって思われるかもしれません。
ラスボスの狂気さ加減をもうちょっと強く描写した方がより効果的だったんじゃないかなとか、途中でラスボスの存在が映画から消えるというのはどうなんだろうなぁとは思いますが(これはワザと、観客にもラスボスの印象を薄くしたいという意図でやったことだと思います)、痺れた映画でした。