悲しみの果てに、死者の群れをお願いします。

演歌・オブ・ザ・デッド 公式サイト(2005-2024©りょんりょん) ※(主に)映画感想dis blogです。かなりdisってるので、不快になられた方にはお詫び致します。ごめんなさい。

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脳男

面白かったですし、楽しめましたが、かなりdisってる上に、ネタバレかましてます。




脳男ですよ、脳男。なんというネーミング。1950年代のB級SF映画に出てきそうな宇宙人を想像しちゃいますよ、うんうん。そんなところから、予告編を観てかなり興味を抱いたのですが、どうも邦画はお金もかかってないし、センスもアイデアもないしつまんないもんが多い、というステレオタイプな思想に固定観念定着状態だったので、正直観ることはないかな、なんて当初は思っておりました。

ただ昨年のことを思い出してみると、いやはや、僕が観たものだけでも、『桐島、部活やめるってよ』とか『るろうに剣心』とか『悪の教典』などなど、素晴らしい映画が目白押しで、邦画だから云々とか関係なく観ようと思い立ち、突撃しました。面白かったです。しかも、かなり。

感情のない設定の人物って、実際に描くのはかなり難しいことだと思うし、恐らく感情のない人物が何か物語を作るとも思えないので、現実的には感情のある人物が感情を持って、感情がないと想像する状態にアプローチしていくしかないんだろうけど、まぁ、無難にまとめてたと思います。FSSのアマテラスみたいなもんですね。アマテラスは何千年もかかってやっと悲しみを憶えたけど、こちらの脳男は悲しみを押し込めていて、それを自分でも忘れていたんかなっていう設定みたいなので、方向的には大きな違いはありますが。

ただ、やっぱり感情を持ってる人物が作ってるだけあって、ところどころ、「えーごっつ感情的やん」って思ってしまう部分があるのは仕方がないことなんでしょうね。

展開は面白かったのですが、一番気になったのが役者陣の温度差というか、演技力の差というか。いや、差ではないですね。噛み合ってなかったように思えるのです。それをきちんと噛み合わせるように演出や調整していくのが製作陣だと思うのですが、役者の力が大きかったのか、それとも口出し出来ない事情があったのかわかりませんが、チグハグな状態のまま最終的な提示になっちゃったなという印象です。

感情のない脳男、感情たっぷりの刑事、感情はあるけど押し殺して冷静にいようとする医者、この三者で対比させたかったんでしょうけれどもね。

面白かった半面、役者も含めた製作陣の力量不足も明確に露呈してしまっているのが残念だったところです。展開だけで惹き付ける魅力のあった題材に救われたとも言えます……。

細かいミスの一つとして、脳男の父親の父親(爺ちゃん)も、そんなに大金持ちなら、息子が轢き逃げされた後はすぐに孫を引き取れよ。っつーか引き取るだろ、あの性格やったら。知らない存在じゃなかったっていう設定なんだし。息子を溺愛してたっていう設定なんだし。プロ失格だと思いますよ、こういう凡ミスは。原作があるので(未読ですが)、原作がそうなってるんなら仕方がないですけど、映画化に際してもっと工夫しないと。

最初、これ、江口洋介が主人公じゃんって思ったんですが、段々と松雪泰子が主人公になっていて、そのまま終盤までいっちゃったんで、脳男の存在感はあるけど、主人公じゃないよね感が強く残ってしまったのもどうなんかなー。ラストの余韻とかも含めて、松雪泰子が主人公でしたね。

確かに主人公と主演の役者は違うっていうのは多々ありますが、映画化にあたって、キャラを纏めた方がよかったんじゃないでしょうかねー。特に、最初の部分はこの映画の全体的な部分とはちょっとテイストも違うし、バッサリカットでよかったと思います。江口洋介の出番は減るけど。

それから、狂気の演技をしただけで、それで演技力があるって思ってたらあかんでーってことです。それに逃げてるだけなんですよね。もっと狂気を出さないと。学芸会の域を抜けてないんですよ。映画の質を落としていたように思えます。

終盤の展開で、ちょこちょこと出て来た脇役達が一同に殺されていくのは爽快でしたが(おいおい)、メインキャラもそこでサクっといって欲しかったですね。江口洋介も吹っ飛ぼうよー。そこんところは、もっと突き抜けて欲しかったですね。

笑ったのが、感情ない人間が、偽名で「鈴木一郎」って名乗るだろうかって。これも爺ちゃんの入れ知恵なんかなー。脳男も爺ちゃんもお茶目やなー。

江口洋介が脳男と結構互角に戦えることは想定内でしたよ。ほほほ。

松雪泰子の母親が、サモハン・ピザ・ザ・ハットだったんでびっくり。あれ、特殊メイクなんかなー。

ラストは、個人的にはバッドエンドだと思います。だって、結局、自分の患者(しかも自分の弟を惨殺した奴)の社会復帰に尽力したのに裏切られ(自分の医者としてのアイデンティティも賭けてたのに)、脳男にも裏切られましたもんね(もう人殺しは止めてってお願いしたのに、自分の患者を、自分の為という理由で殺してるし)。この纏め方なら、もっと松雪泰子にフォーカスして映画を作ればよかったのになーって余計に感じました。

続編は、ハスミンVS脳男を激しく希望。