微妙にネタバレしてますし、微妙にdisっています。
数年振りに、映画館でジャームッシュの映画を観ました。以前は、一番好きな映画監督だっただけに、観る前は無意味にテンション上がっちゃったりしました。
しかも、吸血鬼を題材にしているということもあるし、トム・ヒドルストンが主演しているということもあるしで、かなりハードルを高く上げてしまっていました。
手放しに凄い映画だったとは言えないけど、個人的には凄く面白かったです。あんまし昔と変わってないよなぁっていうノスタルジックな気持ちにもなりました。
正直、客観的な感想としてはつまんないと思うんですよ(笑)。ただ、それでも天才だろってボクに思わせるジャームッシュは、やっぱし天才なんだと思います。
序盤は、なんかジャームッシュも小手先なやり方に逃げるようになったんかなっていうショットが続いたんですが、途中から、「これだよ、あぁ、これだよ、ジャームッシュは」って心の中で叫んでいました。
この肌触り、うーん、やっぱし小津安二郎からかなりの影響を受けてるというか、戦後の小津安二郎の映画での表現をベースとして、ゴダールの狂気というか破滅への疾走感というか、そういうものをまぶして、もう一度小津安二郎の雰囲気に閉じ込めるというスタイルが、ジャームッシュなのかな、と。
そう考えると、オリジナリティはあんましない監督なのかもしれません、ジャームッシュは。
観ている間は、ボクが初めて観たジャームッシュの映画『ストレンジャー・ザン・パラダイス』に似ているなぁと感じていました。登場人物を吸血鬼に変えようが、ジャームッシュが描くのは、登場人物の日常風景や生活している土地(世界)であって、大きなドラマティックな展開はないけど、その土地(世界)に生きる心地よさみたいなものを提示するっていう方式がそっくりなのかな、と。
ティルダ・スウィントンは、撮影時は51歳から52歳だったと思うのですが、メイクのお陰もあるかもしれませんが、そうは見えなかったのが吸血鬼っぽいなと思いました。
ただ、一応彼女がトップクレジットでもあるのですが、映画の中ではそれほど目立ってなかったというか。それほど、トム・ヒドルストンが静けさの中に強烈な印象を叩き込んでいたし、実質彼の役が主人公であったということもあるのでしょう。
ミア・ワシコウスカの使い方も、「えっ、それだけなの、勿体ないなぁ」という贅沢さで、映画に場違いな明るさ(それは、ジャームッシュの映画的には破滅なんだと今更ながら思います)を注入してました。出番は少なくても、キーを握る役ではあったので、彼女ほどのインパクトを残せる役者じゃないとダメだったでんでしょうね。
初期のジャームッシュの映画ファン、トム・ヒドルストンのファン、戦後の小津安二郎の映画ファンにはオススメなのですが、吸血鬼がバンバン血を吸うところを期待している人や、ホラー映画を期待している人や、アクションを期待している人には全くオススメ出来ません。
ラストショットの、トム・ヒドルストンとティルダ・スウィントンのトントンアベックの顔面は、なかなか怖かったですね。