悲しみの果てに、死者の群れをお願いします。

演歌・オブ・ザ・デッド 公式サイト(2005-2017©りょんりょん) ※映画感想dis blogです。かなりdisってるので、不快になられた方にはお詫び致します。

白ゆき姫殺人事件

ネタバレしてます。多分、disってないです。






 これは面白かった。普通に大傑作じゃないですか。うまい具合に全てがベストな関係で絡み合ったって印象を受けました。

 もう、ネタバレ全開で書いていきます。

 この映画は、人間の闇を描いています。つーか、闇しか描いてないんじゃないのって、観終わって暫く経つボクの記憶は、そう脳内に命令しています。

 ハンナ・アーレント風に言えば、悪の凡庸さが炸裂しまくってるんですよ。映画の登場人物はほぼ全員、悪の凡庸さからくる思考を、正義又は普通の感情(それか感覚)だと思い込んでるんですよね。

 わざと事実を言わない者、記憶がもう事実を留めていない者、他者との間で記憶を共有した結果によって事実をねじ曲げている者、色々な人が出てきます。そして、全員本当の意味で謝罪してないんですよ。ツイッタラーも含めて。これ、今の世の中そのものですよね。

 映画の登場人物で嘘をついていないのは、二人だけなんですよね。主人公の綾野剛と、殺された三木典子だけなんです。

 主人公の綾野剛は、彼の行動が神様視点で事実のみを記録されているので、嘘のつきようがありません(綾野剛自身は嘘をつきたくても出来ない)。三木典子は、人々の記憶の中で再構築されるだけの存在に(殺されて)されてしまってますから、彼女自身はもう嘘をつけないんです(三木典子の意志ではっていう意味で、三木典子が実際にそのように行動してたかどうかは不明)。

 もう一人の主人公である城野美姫も嘘をついてるんですよね、恐らくは。映画の後半は城野美姫の回想になりますが、あくまでも本人視点であって、事実かどうかは不明なんです。

 あ、染谷将太も嘘をついてない登場人物だったわ(笑)。まぁ、ゲスト扱いだからね……。いなくてもいい登場人物だったし……。

 誰の話のどこが本当でどこが嘘なのか、いや、もう全てが妄想なのか、単なる記憶違いなのか。

 映画は三木典子が殺されたことによって始まりますが、途中で三木典子が殺されたことすら嘘だったんじゃないか、なんて思ったりもしました。それほど、この映画は虚構(映画は虚構であるっていう意味ではなくて、ね)を組み立てていくうまさがありました。

 ラストは、城野美姫と幼馴染の谷村夕子が、小学生のときのように、窓からの合図で心を通わせることで、人間には闇があるけど、闇を照らす光もまた持っているという希望で終わらせたかったんかな、パンドラの箱のような形で終わらせたんだな、なんて思っていました。

 その後に続く綾野剛の土下座場面とかはエピローグ扱いかな、なんて思っていたら、まさかの二人の主人公の(映画上では)初めての遭遇。しかも、城野美姫が運転する車に轢かれかける綾野剛という展開。これ、城野美姫がわざと轢こうと(っていうか脅そうと)したって捉えると、希望なんて全くなくて、やっぱこの映画は人間の闇しか描いてないなって思わせるんです。

 ボクは、こういう映画としての答えを観客に委ねるっていうのは大嫌いなんですが、この映画のやり方では受け入れざるを得ないというか。うまくやられちゃったなって感じです。

 原作があるから仕方がないのかもしれないのですが、映画を観ていて、疑問に思ったことを書いていきます。整合性が取れてないと思う部分が、製作段階でのミスなのか、それとも計算なのか、それすらもわからないのが、今、凄く怖くなっています。

◯三木典子を殺した犯人である狩野里沙子は、どうして綾野剛に連絡したのか。捜査を撹乱させるためなのか。そうであれば、計画犯罪だったのか。それとも、かまってちゃんなだけだったのか。

◯城野美姫の車を運転して犯行現場に行く狩野里沙子だけど、狩野里沙子はどうして城野美姫の車に乗れたのか。キーはどうしたんだろう。城野美姫が閉めるのを忘れていただけなのか。それとも、城野美姫もグルだったのか。グルだったとしたら、殺人までするって知っていたのか。

◯殺された三木典子は地元(だったかな)の短大卒、殺した狩野里沙子は四年制国立大卒。会社の制度で、二年後に入社した社員をマンツーマンで一定期間教育する係になる、パートナーというものがあります。二年先に入社している三木典子が狩野里沙子のパートナーになるのですが、劇中での三木典子は24歳(年度中に25歳になるのかな)、狩野里沙子は22歳(23歳表記だったかな、ほら、記憶って曖昧w)ですが、三木典子が四年制大学卒で入社なら問題はないのですが、短大卒っていうことは、浪人とか留年してなければ、狩野里沙子と同学年(同い年)なんですよね。でも、三木典子が年上だし。これは原作がそうだからなのか、単なるミスなのか。

◯駐車場に置きっ放しになっていた城野美姫の車に、三木典子を焼いた道具類が入っていたってことですが、それなら警察はもっと城野美姫の消息について、調査の手を伸ばしていたんじゃないのか。重要参考人なわけだし。犯人かそうじゃないかに関わらず。

◯城野美姫の回想で、大学時代からの親友だった谷村美月は、今はもう城野美姫の中では親友扱いではなくなっているのですが、どうしてツイッタラーはそれを知っていたんでしょうか。城野美姫の回想はどこかで発表されたってことになるけど。

谷村美月は若いのに(23歳)、どうしておばちゃんオーラを急に発するようになってしまったのか。大阪出身だからか(マテ)。

 綾野剛ツイッターのフォロー数とフォロワー数が三桁届いてない程度って(笑)。だからこそ、もっとオレを知れっていう気持ちが強くなっていったんかな。綾野剛だけは、自分の欲求に一番忠実に(それが正しい行動ではなかったとしても)動いていたってことから、登場人物の中では彼だけがある意味正直者だったのかもしれません。

 もし、同じような殺人事件がボクの周りで起こったとしたら、ボクも劇中の登場人物と同じような行動をしちゃうんだろうなって思うと、自己嫌悪になったりしますが、それは同じような殺人事件が今はボクの周りでは起こってないから、客観的に自分をもしもの世界に配置したのを見つめられるだけで、現実なら、そんなことすら気付かないんだろうな。