悲しみの果てに、死者の群れをお願いします。

演歌・オブ・ザ・デッド 公式サイト(2005-2024©りょんりょん) ※(主に)映画感想dis blogです。かなりdisってるので、不快になられた方にはお詫び致します。ごめんなさい。

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ゾンビ・リミット

最後の展開のネタバレをかましてますが、disってはいません。




 「シッチェス映画祭」ファンタスティック・セレクション2014の中の1本として上映ということで、ゾンビ大好きなボクとしては、観に行くしかないということで、突撃しました。

 これ、凄くいい映画です。完成度もかなり高いです。予算的な意味(というか本来の意味)ではB級ゾンビ映画ではありますが、低予算とか全く感じさせない仕上がりです。

 この映画の中の世界では、1981年から1985年に一回目のゾンビハザードがあり、全世界で100万人以上の被害があったようです。

 そして、その後二回目のゾンビハザードもあったのですが、ゾンビ化した人間の屍体からゾンビ化を抑える薬が開発され、二回目のゾンビハザードは、一回目よりも被害を広げなくて済んだという設定です。

 ゾンビウイルスに感染しても、治療してゾンビ化を防いだ人は、「リターンド(Returned)」と呼ばれています。その人達は、一部の糖尿病患者のインスリン療法と同様に、毎日薬を注射しないとゾンビになってしまいます。ゾンビ化を止めているだけで、完治したわけではありません。

 しかも、ゾンビ化を防ぐ薬は、ゾンビが少なくなってきているために製造が困難になってきており、数が少なくなってきています。政府の備蓄もほぼなくなりかけという状況です。

 この映画の世界観(設定)がわかったとき、『ラストハザード 美しきジハード』という映画を思い出しました。あちらの映画も、ゾンビが社会復帰しているという内容でした。この映画とは雰囲気はまるで違いますが。

 見た目は荒涼としていない世界なのに、精神的には荒んでいるかのような空気感が素晴らしいです。丁寧に作られているところも好感です。演出も、淡々としており、それが空気感を作っているんだなぁと思いました。ただ、そのお陰でホラー的な怖さはないのですが。

 主人公の彼氏(結婚してたんかな?)が、実はリターンドなんですよね。主人公は、以前の(恐らく)ゾンビハザード時に両親を亡くしてしまって(多分、実の父親が母親を喰っているところを、主人公が父親を銃殺)、それが原因なのか、リターンド専門の医師になっています。

 主人公の彼氏の親友男性夫妻に、彼氏は自分がリターンドであることを打ち明けますが、親友男性夫妻は、彼らを受け入れます。隠れ家として、別荘まで提供します。いやー、素晴らしい友情です(棒読み)。

 ただ、それには裏があって、親友男性夫妻の女性(この人、小説家です)がリターンドであり、主人公が非合法に集めていた薬を横取りするための策略だったんですね、彼らに親切にしていたのは。流石に、親友男性は良心の呵責がありまくりなのですが、配偶者のためには仕方がないと腹を括っています。

 紆余曲折があり、とうとう薬もなくなり、ゾンビ化してしまった彼氏を撃ち殺してしまう主人公。そう、母親が父親に喰われて銃殺した後、母親が自分も殺して欲しいと懇願したのに、殺せなくて現場から逃げ出したという過去に苛まれていた主人公は、ここでまた最愛の人を殺さなくてはいけない状況になってしまい、今度はとうとう殺してしまうのです。

 次の日くらいに、主人公が勤務していた病院の院長が、今までとは違う製法でのゾンビ化を抑える薬の開発をやっと成功させました(従前から開発はしてました)。その報せを聞いて泣き崩れる主人公。母親のときと同じように逃げていれば、という惨すぎる展開……。

 ラストは、映画の冒頭で、主人公が彼氏にこの家に住みたいと言っていた家を購入し、妊娠した状態で暮らすことにした主人公ですが、その家の壁には、彼氏の親友夫妻の行動(配偶者の小説の全国売り込み行脚の行程)が貼ってあったのです。復讐する気満々というところで終了です。

 人間とリターンドの合いの子にも興味がそそられますし、復讐劇にも興味がそそられますので、是非とも続編を作って欲しいとは思いますが、この映画のテイストとはガラっと変わる展開になるでしょうねー。

 リターンド反対派の中の過激な連中の行動とか、差別意識の問題とか、ゾンビというモノを使って現在社会の暗部をそれとなく描写していく様は、かつてのロメロのゾンビ映画のようでもあります。

 社会派ゾンビ映画であることと、ゾンビがあんまり出て来ないのと、ゾンビのお食事場面もそんなにないので、そういうのを期待しているゾンビ映画ファンには物足りない映画になっちゃうかもしれません。

 それから、展開は王道な面もありますので、ラストも含めて予想しやすく、もう少し大きな驚きがあってもよかったかなとは思いました。