ラストを書いてるのでネタバレしてると言えばしております。disってもいるかな。
オープニングはやられましたね。
ヌーベルバーグっぽい場面の質感というか空気感に、そこはかとなくまぶされたジャームッシュの粉。どこかの家から猫を拝借し、街を歩く主人公。橋を通りかかると、その下にはたくさんの人の死体の川。えええええと暫し混乱する頭と心。貧乏人の少年が主人公に集るが、自分の稼いだ金だと言い放って、買ったばかりの車に乗って去って行く。
いや、もうね、この場面だけで、個人的にはこの映画を嫌いになれるわけないじゃないですかってことですよ(爆)。
でも、この映画を例えて言うなら。
愛情のないベスト盤の音楽CD収録の曲のような、高品質のコピーのような、プラスしてあざとさもあるといった感じでした。個人的には大好物ですし、ここまで作れてしまう才能というのは正直羨ましいこともあり、胸中は複雑です。
ただねー、映画としてはつまんなかったですね。これが一番の問題かも(笑)。
ヌーベルバーグ、初期のジャームッシュが好きな人は楽しめるかもしれません。それと、ジャームッシュの吸血鬼映画である『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』とも、微妙に世界観が似通っているようにも思いました。
主人公が街を最後には見捨てて去っていこうとするのも、初期ジャームッシュ的だよなぁ、あとになって思い返すと。
吸血鬼の要素って必要ではなかったですよね。悪く言えば、その要素を活かせていなかったってことです。別に少女(「The Girl」というのが役名)が吸血鬼でなくても、物語は同じように運びますしね。こういうところも、影響が監督の血肉になってないと思えてしまうところなんですよね。ただ単に要素を押し込めただけっていうのが分かるというか。
アレンジというかミキシングの才能は素晴らしいのですが、オリジナリティがないというか、影響ではなくコピー(それが高性能過ぎて本物と違いが分からないというクオリティですが)してるだけに過ぎないんですよね。佐野元春みたいなもんです。
それでも、最初にも書きましたが、この才能は羨ましい。本当に羨ましい。