少しネタバレしていますし、少しdisっているかもですが、褒めている部分もありますよ。
新宿ピカデリーにて観賞
予告編を観ての印象と、これまたSNSでいい評判を目にしたので観賞してきました。うん、誰かにオススメすることはないけど、面白く観賞できたかな。
最初は絵画のようなカットと色味で、こういう映像美の中でゆっくりと時間が過ぎていく小津安二郎系の映画かなと思っていましたが、途中からなんとなく不穏な雰囲気が醸し出されてきて、画面もいつの間にか少し乾いたリアルさを伴っているような質感に変化し、不穏な雰囲気はそのまま映画を支配する空気となって存在し、ゆったりとした時間の流れは変わらずに(最後は10年程度飛びますが)、画面の質感が最初の頃に戻った途端に主人公の死(ですよね)と共に映画も幕を閉じた。という感想です。
観客に想像する余地をふんだんに残す手法を否定する気はありませんが、本作もそういう系統の映画であり、そのためにあやふやなところも多く、ふんわりし過ぎて悪い意味で掴みどころがないというものにもなっています。そういうのが苦手な人には合わないですし、妄想、じゃないや、想像するにしてもハッキリとした正解や意思表示がなく提示されているだけなので薄っぺらく感じてしまい、だからどうした?という気持ちも強く、これまた悪い意味で底なし沼に足を絡められてしまっているのかなと思ったりしています。
ゆっくりとした時間の流れの中でも飽きさせない作り方は素晴らしいなと思いました。構成がいいのか、演出がいいのか、俳優がいいのか、その何れもなのか、私には分かりませんが、手練れた者の仕事振りというのを感じました。
パリ郊外の田舎(だと思っていたら、ブルゴーニュが舞台らしい)に住んでいる、昔はパリで娼婦を営んでいた主人公は、そのことで娘との関係性は悪く、孫ともあまり会えず、娼婦時代の親友と共に散歩したりする日々でした。
突然娘が(お金の無心のために)休暇の時期に帰ってくるということで、ルンルンランランで親友ときのこ狩りをして、それを昼食として娘や孫に振る舞いますが、主人公は娘の態度で気分が悪くなったと言って食べず、孫もきのこは嫌いだと言って食べず、娘だけが食べて食中毒で病院へ。
きのこ狩りのところの描写において、主人公の親友はきのこ狩りを普段からしていて、ある程度はきのこの種類を見極めることができるが、主人公にはその能力がないことが提示されます。
主人公が図鑑を見ながらのきのこ選別で、わざと食中毒を起こすきのこを投入したのかどうかというあやふやな描写が観客に示されます。孫もきのこは嫌いだしということでわざとなのかというミスリードをしつつ、成長した孫はきのこは前から好きだったと言ってるので、おそらくここは主人公の選別ミスだったのでしょう。という提示もされます。
主人公の親友のムショ帰りの息子が主人公の娘に会いにパリの部屋まで行って、そこで主人公の娘は転落死するのですが(嫌っていて久し振りに会う異性を部屋に入れるかねw)、それが主人公の親友の息子によるものなのかどうかというのも、そう匂わせつつも答えは提示されません。
まぁ、こういった描写が多く、観客に想像しろと迫ってくるわけですが、それで疲れるなという感じはしなかったので、うまい提示の仕方だったのかなと思います。
人は人生を歩む中で様々な秘密を抱え込むもので、それは例え家族であっても、親友であっても吐き出すことができないものもあり、それを全て吐き出すことができるのは死ぬ瞬間なのかな、と。なので、主人公が最後に倒れている場面(おそらく死亡)を少し神々しいような撮り方にしたんじゃないかなと。
本作を観賞しに来た人の中には、幽霊が登場したりするような映画だと思わなかった人も多そうでした。幽霊というよりも主人公の妄想なんだなというのは理解していますけどね。あ、いや、本当に幽霊かもね(笑)。