悲しみの果てに、死者の群れをお願いします。

演歌・オブ・ザ・デッド 公式サイト(2005-2024©りょんりょん) ※(主に)映画感想dis blogです。かなりdisってるので、不快になられた方にはお詫び致します。ごめんなさい。

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007/ノー・タイム・トゥ・ダイ

ネタバレしてます。disってることになるかなぁ。

 

 

 

 

 

 先ずはネタバレなしの簡単な感想から。前半はよかったのですが(この映画は大傑作になるんじゃないかっていう雰囲気がありました)、中盤以降は前半にあった緊迫感や緊張感がなくなり、結果として普通の面白いかなっていう映画に落ち着いたって感じです。時間が長かったというのも裏目に出たかもしれません。

 アナ・デ・アルマスさんの活躍は素晴らしかったです。もっとアクション映画に出てほしいなと思う俳優さんでした。また、ダニエル・クレイグが演じるジェームズ・ボンドのシリーズは一応本作で終了なんですよね。お疲れ様でした。

 

 ここからはネタバレありの感想です。ボンド(ダニエル・クレイグ)はスペクターの幹部だったミスター・ホワイト(イェスパー・クリステンセン)の娘であるマドレーヌ(レア・セドゥ)とスパイ引退後の生活を営んでいましたが、ヴェスパー(エヴァ・グリーン、『007 カジノ・ロワイヤル』に出演のキャラ)の墓参り先でスペクターの一味に襲われ、自分の行動や居場所を知られているのはマドレーヌが漏らしているからだと思い込み、マドレーヌとの別れを選択します。

 それから5年後、CIAのライター(ジェフリー・ライト)からナノボット兵器化事件とその開発者についての調査に協力してほしいとの依頼があり引き受けます。キューバ(だったかな)でのスペクター主催のブロフェルド生誕パーティーに潜入したボンドですが、逮捕されて英国の牢屋にぶち込まれているはずのブロフェルド(クリストフ・ヴァルツ)はボンドが来ていることを知っていました。しかし、実はそのパーティーでのボンドは釣り餌で、のこのこ集ったスペクターの皆さんをナノボットを使って殲滅するためのパーティーだったのです。スペクターの皆さんはナノボットであっさり全滅。ボンドはCIAのパロマ(アナ・デ・アルマス)との共闘もあり、新007(ラシャーナ・リンチ、ノーミという名前です)も狙っていたブロフェルド生誕祭の場所にいたナノボット開発者の確保には成功しますが、ライター達との合流先の船で、ライターのパートナーであったアッシュ(ビリー・マグヌッセン)に裏切られ格闘の末にライターは死亡、船を爆破されましたがボンドはなんとか生き延びます。

 MI6に復帰したボンドは、牢屋にぶち込まれているブロフェルドが唯一面会可能な医師になっていたマドレーヌと再会します。マドレーヌはサフィンラミ・マレック)にマドレーヌの大事な人の件で脅され、ブロフェルドだけを殺せるナノボットを手渡され殺害を依頼されます(この時点ではマドレーヌはナノボットが何かというのを知りません)。ボンドと再会したマドレーヌは、結局ブロフェルドを殺すことができずその場を後にしますが、マドレーヌ経由でボンドにブロフェルドだけを殺すナノボットが感染していました。マドレーヌが脅されてブロフェルドを殺そうとしていたことをこの時は知らなかったボンドはブロフェルドとの質問タイムで脅しのつもりでブロフェルドの首を絞めてしまったが故に殺してしまうことになります。

 真相を追うためマドレーヌの実家に赴きますが、そこにいたのはマドレーヌとその娘でした。はい、ボンドとの間にできた子供でした。その家に今回の敵であるサフィン一行が襲撃を仕掛け、マドレーヌと娘を攫ってしまいます。そしてアッシュを追っていた新007がノコノコとやってきて、若干切れ気味のボンドです。

 サフィンの本拠地は日本とロシアの国境付近のロシアの廃棄された基地がある島で、ボンドと新007とでかちこみます。マドレーヌと娘を救出し、サフィンの計画(ナノボットを世界に放ち人類抹殺すると脅して各国からお金儲け)を潰すために近くにいた英国軍艦からのミサイル攻撃を要請。最後に残ったサフィンを殺しますが、その時のじゃれあいでおそらくマドレーヌとその娘に有効な(触れると殺してしまう)ナノボットに感染。時間もなく逃げる方法もなくなったボンドはミサイル攻撃を浴びて死亡。マドレーヌは娘にボンドの話をし、MI6のメンバーはボンドを悼んで終了です。

 あ、一番の大きなネタバレはね、「ボンド土下座」ですよ、マジで。

 

 ここからかなり長くなりますが、本作観賞後の私の感想です。今回の敵であるサフィンを演じたラミ・マレックが、メインの敵役とはいいながら登場時間があまりないというのも原因なのか存在感がなかったんですよね。キャラクターとしては薄幸な雰囲気を出さないといけなかったと思うので、それで存在感が薄くなってしまうのは仕方がないとしても、スペクターの組織を殲滅?させるくらいの活躍をしているのに小物感が充満していました。

 また、サフィンがメインの敵役ということから結果的にスペクターという組織を噛ませ犬に使ってしまうことになり、ブロフェルドが監獄に収容されながらもスペクターを指揮していたという展開での脅威が薄まってしまったのも問題でしょう。

 サフィンの復讐の動機も分かるのですが、マドレーヌに固執する気持ちがあったとしても何十年も(少なくとも20年くらいは)接触はなかったわけで。監視はしていたかもしれないけど。それとボンドに対する気持ちもよく分かりませんでした。マドレーヌの恋人だからいたぶりたかったのか、ブロフェルドの義理の兄弟だから憎さが伝播したのか、単に自分の計画遂行にあたっての脅威になるから排除したかったのか。

 サフィンがマドレーヌを脅してブロフェルドを殺してほしいと依頼するときに、断るとマドレーヌにとって大事な人の命が危ない(サフィンはマドレーヌがボンドとの娘を極秘出産し育てているという情報を知っている)というような駆け引きをします。劇中ではまだ娘は登場しておらず、マドレーヌにとって大事な人とはボンドであろうというミスリードをもたらしたかったのと、マドレーヌはやはりボンドを裏切っていたのかという思い込みを観客にさせたかったのも分かるのですが、それをしたことでマドレーヌとサフィンの関係性というか、サフィンのマドレーヌに対する感情が見えなくなってしまったように感じました。つーか、マドレーヌもMI6とツーカーなんだから娘共々保護してもらったらよかったのに。サフィンも場所を知ってる昔のセキュリティがガバガバ(笑)な、近くに誰もいないような家に逃げ込むのもどうなんだろうかと。こういうところが緊張感を削いでしまうことになったのかな。

 マドレーヌがなんでサフィンとの過去の出来事をボンドに秘密にしていたのかも分からないポイントでした。自分が殺されかけたので逆襲しましたが、逆に敵に命を救われましたっていうだけじゃんかと。前作の『007 スペクター』でもちらっと話していたような気もしますが、本作にあたってダニエル・クレイグ版の007を一応全部鑑賞し直したんですが、記憶力が曖昧で思い出せません(笑)。

 新007のキャラが弱く描かれているのもどうなんだろう。演じた俳優がどうこうではなく、なんかほぼ活躍しないまま終わったという感じでした。しかもブロフェルド生誕祭での場面はパロマの方が能力が高そうにしか見えなかったし。展開としてもパロマの活躍でボンドは所期の目的は達成し、新007はドジったわけですから。これなら新007というキャラを出さない方がよかったのかもしれません。007の番号をボンドに返す場面だけはよかったけど。その為だけに設定したキャラだったんかな。パロマがライターの仇討ちという形で最終決戦にボンドと共に殴り込むという展開の方がスッキリしていたような気がします。

 エンドロールの終わりに「JAMES BOND WILL RETURN」と表示されるのですが、この意味は次は別の俳優で007映画を作りますよ、次回作は新しい俳優が演じるジェームズ・ボンドの登場ですよっていうことなのは分かっていますが、ダニエル・クレイグ版の終わりの作品で、しかもダニエル・クレイグ演じるボンドは死亡しているんだから、これはないんじゃないかと後味悪かったです。そんなことは書かれなくてもほとんどの人が分かっていることだろうし、わざわざエンドロールの終わりに報告することじゃないです(これまでもこのテロップって出てましたっけ?)。

 シリーズ物共通の欠点で、それまでの作品を観ていないと楽しめない、理解できないというのがあったりしますが、本作はその傾向が強いというか、ダニエル・クレイグ版の最終回でもあるので、敢えてそうした部分もあったでしょうけど、それが大きな欠点にもなってしまったかなと思いました。

 今回のボンドは今まで一番無双していたような気がします。目の前で爆発が起こってもすぐに立ち上がるし、目の前で手榴弾が何発も爆発してもすぐに立ち上がるし、腰部や足に銃撃を受けても少ししたら立ち上がって普通に歩くし。軍艦からのミサイルもほぼ直撃ぽかったけど、なんか本作のボンドならそれでも生き残るような気がしないでもないです。そういう演出から、ボンドは死んでないだろうという感想を持つ人の気持ちもなんとなく理解はできます。あ、次回からはダニエル・クレイグがサイボーグ007として活躍するのか。スキンヘッドにしないとあかんけど。

 最初に画面に登場したときのボンドは呆けて老けたなーという表情だったんですが、そこから襲撃され、それを撃退している間にすっかりとエージェントの表情を取り戻すという展開は胸熱でしたね。これはダニエル・クレイグの演技力の賜物ではないでしょうか。

 オープニングはよかったんですよ。マドレーヌの父であるミスターホワイトに家族を殺されたマフィンはミスター・ホワイトを殺しにきますが、ミスター・ホワイトは不在で飲んだくれのアル中?の母親は殺すことはできたものの12歳か13歳くらいのマドレーヌには隙を突かれて銃撃を食らって死んだかと思われましたが蘇生します(防弾チョッキを着てたんかな)。マドレーヌが恐怖で逃げようとしたところは氷上の湖で氷が割れて落ちてしまいます。必死で助けを求める表情のマドレーヌを見て、サフィンはマドレーヌを助けます。おそらく、自分の家族がミスター・ホワイトに殺されたときの表情と似ていたのか、その時の状況を思い出したからが助けた理由なのだと思います。

 脚本の段階でも色々と変更とかがあったようで、それがしっかりと整理し直されていない状況で撮影に入ってしまったのかなという感じがしました。それでも、及第点以上に仕上げてくるところは流石なのですが、本当に何度も書いてしまいますが前半が素晴らしいを超えた内容だったので、それが全編にわたって持続しなかったことはとても残念で、観賞後の印象もそれに引きづられてしまいました。