悲しみの果てに、死者の群れをお願いします。

演歌・オブ・ザ・デッド 公式サイト(2005-2024©りょんりょん) ※(主に)映画感想dis blogです。かなりdisってるので、不快になられた方にはお詫び致します。ごめんなさい。

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四月になれば彼女は

ネタバレはそんなにしていませんが、かなりdisっているかも。でも、好きな類の映画なんですよ、マジで。

 

新宿ピカデリーにて鑑賞

 

 原作は未読です。

 景色(風景)を綺麗に撮ってさえいればいんじゃねっていう、ふわっとした雰囲気の中で誰もが手探りで進めた結果、よく分かんない映画が産み落とされたという印象です。私は嫌いではありませんが、他人にオススメはできないよなっていう映画ではあります。なんか掴みどころがないんですよね。

 生活感が画面に映し出されていないのもそうですが、登場人物に血肉が通っていないというか、銀幕にそれが反映されていないというか。俳優陣も製作側も登場人物をしっかりと掴めていなかったというか、雰囲気のみの設定を与えられた登場人物が淡々と脚本どおりの日常を歩いているだけというか。

 生活感がないというのが悪いという意味でも否定したいということでもなく、生活感を出さないなら出さないなりの、ないならないなりの描き方があったのではないかなと引っ掛かっているのです。

 アイドル系映画の作り方(組み立て方)なのに、演技力のある俳優を主人公に据えて、風景(景色)にもそれなりに力を入れて撮影したという形が、結果としてはかなり歪な現出になってしまったのかなと鑑賞後に思い至りました。アイドル系映画がいけないという意味でもなく、それならそれに適した作り方があったでしょうよと言いたいわけです。

 それが如実に現れているのが森七菜さんの役柄で、演じられた伊予田春という登場人物は、おそらく18歳前後から32歳前後の年齢を劇中内で推移したはずなのですが、大学生時代はいいとしても、現代のところではどう見ても20歳から22歳くらいの容姿であり、映像と設定年齢とのギャップが激しいんですよね。

 ここが昔からの日本の俳優陣と映画界の限界なのですが、もう少し丁寧に誠実に役柄に息吹を与えてほしいなと思った次第です。所謂やっつけ仕事というか、提供側のやった感のみが放出されているというか。やった感ではなく、出てきた結果が大事なんですよね。やってなくてもいいので。

 しかも、伊予田春は30歳前後で緩和療法の医院?に入院しているくらいの末期症状なのに、それが全く容姿に反映されていないというか。実際にどうかではなく、一般的に想像されるものという意味で。そこがアイドル系映画の描写にしかなっていないというか、アイドル系映画にしか見えない原因でもあるのです。

 長澤まさみさんが演じられた坂本弥生という登場人物も単なるメンヘラでしかないよなとしか思えないですし。行動力があるとかないとかの問題ではないですよね。それに、動物園の獣医の仕事は長期休暇扱いだとしたら、緩和療法の医院?への勤務に際し健康保険とか年金とか税金とかそういったものの処理はどうしたんだろうかとか。アルバイトにしても住み込みでフル勤務でしょうからね。そういった部分の設定管理がおざなりなんですが、こういう部分もアイドル系映画の作り方なんですよね。

 時の流れというか、経過した時間の描き方も下手なのも残念でした。坂本弥生が主人公のもとを突然去ってからおそらく1年程度は経過していると思われますが、家族から捜索願とか出るよねと思いつつ、生活感がない映画なんだから、もっとファンタジーを前面に押し出しつつ利用すればいいのにと思ったりしましたね。あ、でももう大人なんだから警察に言っても事件性がないとかで取り扱ってくれないのかな。

 佐藤健さんは安定した演技でした。登場人物を多分出演者の中で一番掴んではいたと思います。主人公の取った行動とかが、人でなしっぽい感じというか、冷徹?っぽい感じで扱われていたりしていて、仲野太賀さんが演じられた登場人物に婚約者が去っていった理由がまだ分かんないのかって言われたりしましたけど、分かんねーよなと同情するしかありませんでした。至って主人公は普通じゃんか、と。悩みとかはあるけど。

 つか、主人公と仲野太賀さんが演じられた登場人物との関係性がよく分からないというか、単に店のマスターと客という間柄だけではないような気もしますが、こういう部分の描き方もおざなりでした。人物相関関係に重みが出ないというか。いえね、仲野太賀さんの演じられた登場人物とペンタックスはいい人だというのは分かりますよ(笑)。

 坂本弥生の妹からも結婚する気なかったでしょとか、いなくなって云々と言われていますが、お前も家族ならもっと心配しろよって思いましたよね。主人公の方が余程心配して行動してるじゃんって。こういう作劇というか、登場人物の設定の甘さ(原作もそうなのかな)がやたらと目立ってしまったのも残念な部分です。

 伊予田春が死んだのをペンタックスが知ったのは、ペンタックスが出身大学に勤務しているからだとして、そういうところの作り込みが気になるんですよ。想像できるだろって言われたらそうなんですが、観客に想像させる部分としっかりと設定で決めている部分の切り分けは必要だと思うのです。

 かなりdisってしまいましたが、私は本作は嫌いではなく、好きな類の映画ではあることを改めて申し添えます。いや、マジで。映画表現の技法、技術的な部分では低品質だと思いますが。あ、いや低品質というより、お好み焼きの具材と製法でお好み焼きを作るのではなくピザを作ろうとして失敗したって感じかな。ただ、それを補って余りある雰囲気重視の作風は嫌いにはなれないです。

※2024年4月8日追記

 主人公と坂本弥生が同居しながらも寝る部屋は別々とか(個人的にはその方がいいので気にしなかったけど)すれ違いの生活を送ってるとか、セッ◯スレスであろうとかの匂わせがあったりと、一応二人の関係性をそれなりに描こうとしていたなというのを思い出しましたが、それでも坂本弥生が出ていくような理由としては弱いなぁとは思っています。