悲しみの果てに、死者の群れをお願いします。

演歌・オブ・ザ・デッド 公式サイト(2005-2024©りょんりょん) ※(主に)映画感想dis blogです。かなりdisってるので、不快になられた方にはお詫び致します。ごめんなさい。

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ゴジラ −1.0

ネタバレしています。一部disっているように見える部分があるかもしれませんが、凄い映画だったと思っているのは本当です。

 

TOHOシネマズ新宿、IMAXレーザーにて鑑賞

 

 凄い映画でした。これは大きなスクリーンで一度は観てほしいと一般観客ながら思うくらいに、ゴジラの迫力が凄かったです。また、色々な所謂大人の事情が複雑に絡み合うというか、映画製作自体よりも優先される(であろう)日本の映画製作において、ここまで丁寧に作り込むことができるのかという点でも驚愕です。先日鑑賞した『アナログ』もそうですが、このまま日本映画全体の品質をもっともっと上げていってほしいなと思う次第です。

 怪獣映画としての要素、ヒーローモノ的な側面、戦争への警告、生きることへの希望、それに繋がる未来、こういったものをしっかりと吟味して混ぜ込ませ取りまとめて、一つの映画として作り上げたことに驚きしかありません。

 一作目の『ゴジラ』のリメイクとも言えますし、オマージュとも言える作りになっています。その点からも、誤解を招く書き方になるかもしれませんが、日本の文化の中で生まれ育った人にしか作れないゴジラ映画だったと思います。

 特に、近年のハリウッド版ゴジラと比較してみても違いが明確に分かるほどに、日本が作る今のゴジラ映画はこれだと言える作品ではないでしょうか。(ハリウッド版ゴジラが駄目だとかそういう意味や意図ではありません。異なる味わいがあり、それがしっかりと可視化されているのではないかということです。)

 ゴジラの造形自体は、ハリウッド版ゴジラに似ています。ここは好みが分かれるというか、日本特撮原理主義者の人は反発する部分だとは思いますが、個人的には本作には合っていた造形だったと思います。

 第二次大戦後間もない日本(というか東京、というか銀座)にゴジラが来襲し、絶望に打ちひしがれた状態から立ち直りかけたところへの更なる絶望と、それに無慈悲に加味された恐怖をももたらすという状況に、大切な人が生き残るために、未来のために、小さな力しか持たない人達が結束して立ち上がり抗うという内容です。

 主人公は特攻隊員でしたが、死にたくない一心で飛行機が故障していると偽り時間を稼ぎ、そのタイミングで修理先の大戸島でまだ巨大化していないゴジラに襲撃されるも恐怖心から何もできず。そのことを引き摺りながら終戦を迎え、PTSDになりながらも、ふとしたことから若い女性と赤ん坊の二人と一緒に暮らすことになりました。

 そうして2年近くが経った頃、核実験で変異し巨大化したゴジラが東京・銀座を襲撃。米国(GHQ)はソ連との関係から、日本国政府も無責任さから、面と向かって対策しない状況で、民間での有志が集って、対ゴジラ作戦(わだつみ作戦)を展開します。結果としては失敗するものの、主人公の操縦する旧海軍の戦闘機である震電が爆弾となり、ゴジラの口の中に特攻し爆発。それによりゴジラは頭部が破壊され、海底に沈んでいきます。

 敢えてと言いますか、苦言的なものになりますが、以下の二点の展開は見直してもらった方がいいんじゃないかなと思ったところがあります。敢えてと書きながら、こっちの方が長くなってるような(苦笑)。

 先ず一点目ですが、浜辺美波さんはゴジラが銀座を襲ったときに神木隆之介さん演じる主人公を庇って、ゴジラ襲撃による爆風で吹っ飛ばされて亡くなったと思わせるのですが、終盤で実は生きていた(電報がきて、その内容は観客には最初は伏せられていますが、大凡検討が付くものではあります)ということが匂わされ、ゴジラを退治したあとに助かっていましたということが判明するのですが、ここは亡くなったままでよかったと思いました。

 まぁ、葬式はしていたけど遺体は見つかってなかったろうし(見つかった設定なら、そういう場面を入れただろうし)、演じているのが浜辺美波さんなので、これは生きてるなと思わせるには十分でしたが。

 この流れは、物語面における主人公に対する未来への希望というお土産なんだろうし、そういう展開を望む人が多いであろうということからなのでしょうけど、なんか生きること、生きていることを軽視したような、これまでの登場人物の頑張りを薄くしたような印象を受けてしまったのです。助け合うことで生き延びるという描写はほかにもありますが、この展開のインパクトはそれほど大きいということです。

 二点目は頭部を吹っ飛ばされて(こんなに綺麗にボコられたゴジラは初めてのような気がします)、肉体が崩れ落ち海底に沈んでいったゴジラですが、ピッコロみたいな再生能力で復活していく様が描かれる部分です。

 映画の宣伝文句の一つである「生きて、抗え。」のとおり、浜辺美波さんは生き残っていたし、ゴジラも再生しますよということなのでしょう。「生きて抗う」ことは何も人間の専売特許じゃないという意味もあるでしょうし、商業的に続編とかを作りたいという邪な要素もあるでしょうが、蛇足だったと思います。

 結果的に続編が作られるにしても、本作は本作のみで完結してほしかったと言いますか、これまた登場人物が劇中で行ってきた行動が無になるという意味なので、えっ、この映画のテーマをちゃぶ台返ししていないかと思ってしまったのです。感動している余韻を台無しにされかけたというか。

 あ、それと、大戸島でゴジラが人を喰らうのかと思ったら、咥えて(というか、ゴジラ的には甘噛?)放り投げるだけだったのは、一応一般観客対応のためなんだろうけど、そこは生きたまま喰わないとあかんやろと思ったのは内緒です(笑)。

 先にも書きましたが、本作は本作のみで完結みたいなスタイルを表面的にせよ、とってほしかったとは思っていますが、次回作があるなら、大阪を舞台としてアンギラスと戦ってほしいなと。今度の新しい万博会場をぶっ壊しながらの怪獣バトルを期待したいですね。